本物の愛
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▼ 本物の愛

リチャードとジェニファーは結婚して3年目を迎える夫婦です。

夫のリチャードは証券会社に勤める仕事のできるビジネスマン。
車が一番の趣味で大の車好きで、心の底から車を愛しています。

一方、妻のジェニファーは、保険会社勤務のOL。
やさしくて温和な人柄で、周囲からも信頼されています。

さて、リチャードには長年の夢がありました。

それはスポーツカーを手に入れることです。
特に、ポルシェにあこがれていました。

ただ、ポルシェは高い。なかなか手を出せないでいましたが、
車検で車あの買い替え時期。ついにポルシェを買う決意をしました。

予算は大幅にオーバーしていましたが、長期ローンを組んで、
ついに、あこがれのポルシェを新車でオーダーしたんです。

購入後、リチャードは、納車までの毎日が待ちきれませんでした。

そして、いよいよ納車の前日。
会社から帰ってきたリチャードは、不機嫌な顔をしていました。

ジェニファーは聞きました。
「何かあったの?」

「まったく、ふざけてる!急遽、明日から5日間の出張が決まったんだ。」
と、リチャード。

「まあ!では、愛車との対面は、おあずけなの?」

「いや、出張は午後からなんだ。
ディーラーには、午前中に納車するように電話しておいた。
だから、対面はできるけど、運転するのは、おあずけだな。」

翌日、新車のポルシェが納車されました。

リチャードは、「では、キーをあずけておくよ。慣れないうちは
運転しにくいかもしれないけど、慣れてきたら快適になるさ。
それから、この封筒には自動車保険などの書類が入ってる。
もし何かあったら、保険会社に連絡すること。封筒はサイドシート
の前のボックスに入れておくから。」

こうしてリチャードは、後ろ髪を引かれながら出張に出かけました。

その日の午後、ジェニファーは買い物に行く用事がありました。
いつもだったら車で行くのですが、その日は、ためらいました。

リチャードの夢だったポルシェの新車。

そのポルシェを、慣れない自分が運転して、もし傷でも
つけるようなことがあったら大変です。
リチャードに、なんて謝っていいのかわかりません。

しかし一方、好奇心もありました。
「リチャードがあこがれていたポルシェって、どんな車だろう?」
運転して乗り心地を味わってみたいという思いもあったのです。

結局ジェニファーは、ポルシェで買い物に行くことにしました。

そして運転をしていて、発進するときの加速の素晴らしさに気づきました。
「これがスポーツカーの醍醐味なのね。たしかに気持ちいいわ。」
信号待ちの時に、ハンドル周りにいくつかの見慣れない
スイッチがあるのに気づきました。

「これは何のスイッチかしら?」

スイッチを見ていたら、不意に後ろの車がクラクションを鳴らしました。

信号が青に変わって、前の車がすでに発進していたのです。
ジェニファーは、あわててアクセルを踏みました。

ポルシェは、スムーズに加速を始めました。

ジェニファーは、クラクションを鳴らした後ろの車が、
バックミラーの中どんどん小さくなっていくのを見ました。

「ほんとうにすごいスピードだわ」

そして、ジェニファーが再び前を見たとき、
前の車がブレーキをかけたところでした。
ジェニファーもあわてて急ブレーキをかけましたが、
勢いよく加速したポルシェは、すぐには止まりませんでした。

ドーーーン!!!!!!!

ジェニファーの車は、前の車に衝突してしまいました。
幸いジェニファーにケガはありませんでした。

しかし、ジェニファーが外に出て見てみると、ポルシェの前の
バンパーには、大きな傷が入ってしまっていました。

ジェニファーは、ちょっとしたパニック状態になりました。

「どうしよう!どうしたらいいの?リチャードの大切な車に
傷をつけてしまったわ。きっとリチャードは怒るに違いないわ。
なんて謝ったらいいの?どうしよう・・・」

前の車のドライバーが言いました。「警察と保険屋に連絡しましょう。」

ジェニファーは、サイドシートの前のボックスに、保険関係の書類が
入った封筒があることを思い出しました。

そして、封筒から書類を取り出すときに、書類の一番上に
リチャードが走り書きしたレターがあるのに気づきました。

そのレターには、こう書いてあったのです。

「愛するジェニファーへ
この封筒を開けているということは、何かあったんだね。
まず、一つだけ伝えておきたい。
僕にとって大切なのは、
ポルシェではなく、君だということを」

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「一番大切なもの」を一番に大切にすること。
それがどんなに大切なものなのか。
じっくりと考えてみるといいかもしれませんね。

大切なものをほったらかして、目の前にある
ちょっと楽しそうなことに夢中になってしまう。
本当に大切なものが何なのか、気付くことが大切なのですね。